外観検査は作業ではない!

自動車向けの内装部品では、寸法や形状はもちろんですが、外観にも厳しい要求があります。特に日系自動車メーカーの場合、その厳しさは半端ではありません。

その内装部品のメッキをしている日系中国工場では、顧客への外観不良流出が止まらずその対応に苦慮していました。

クレームとなれば当然のことながら原因を究明し対策実施の報告書を顧客に提出する必要があります。納入の度にクレームになっていること、及び納入した不良品の代替品の手配などの対応で工場は混乱状態となっていました。また、これらの対応で本来やるべき業務がまったく手が付かない状態になっていました。

この中国工場の外観検査の現場を見ましたが、はっきり言って検査ではなく作業でした。これでは外観不良が流出しているのも頷けるもので、自動車向けの製品を扱っているという自覚があるのか疑問に思いました。

外観検査精度を高めるためには、次の項目を整備していくことが必要です。
・検査基準の明確化
・限度見本の整備
・検査手順の設定
・検査環境の整備
・検査員教育とスキル把握(認定)
・検査精度の定期的なチェック

まず酷かったのは、検査環境でした。
工場が手狭という制約があるとはいえ検査工程が通路になっている状態でした。人の出入りは激しく、検査員のおしゃべりも含めて人の声が常に響いている状態でした。とても検査に集中できる環境ではありません。

次の問題は、検査基準と限度見本です。
検査の基準はあると言っているのですが、それを示す見本がありません。それでどうやって検査をやれと言うのでしょう。新人検査員入社後の教育で、現物を見せて不良とその限度を教育すると言っていましたが、指導する人によって基準が異なっている懸念もあります。

ですから検査員が検査基準を本当に理解・把握しているかどうかも分かりません。検査業務を監督する組長がいますが、彼女たちの役割と責任も明確ではなく、何を監督しているのか不明でした。

他にも問題は山積みですがこれらのことから言えるのは、この中国工場は外観検査というものを甘くみているということです。検査員を置いて、検査を実施させれば出来ると思っていたようです。

日系の工場がこのような状態にあることに驚きました。技術力は持っている企業なので、とても残念でした。