作業者の意識に頼った作業になっていないか?

ある日系の中国工場では、機械加工工程と組立工程を持っています。機械加工工程で加工した部品を組立工程で組み立てて出荷をしています。機械加工工程には、切断機、プレス、タップ加工機があり、プレスでは主に穴あけ加工を行っていました。

工程では、作業者の2時間ごとの自主検査に加え、巡回検査員を配置し定期的に加工した品物を検査するようにしていました。その巡回検査員の検査記録を見せてもらうと、プレス穴あけの穴位置寸法にNGがあることに気が付きました。

金型に異常があったか、摩耗によるNGかと思いました。これが不良発生の原因ならば、その後の生産品もNGになるはずですが、そうではありませんでした。NGになったのは、巡回検査員が検査したものだけだったのです。

つまり原因は別にあったのです。プレス作業をよく見てみると、作業者はワークを金型にセットするときに奥のピンに突き当てるように置いていました。ワークをピンに突き当てることで、位置を決めていたのです。

この工法だと作業者がワークをきちんとピンに突き当てるかどうかで穴位置寸法が左右されてしまいます。作業者もしっかり突き当てるように指導されているので、ほとんどのものはピンに当たった状態でプレスされています。

しかし、何かの拍子でピンに当たらない、正しい位置にセットされないこともあり得ます。例えば、異物が挟まっていたとか、ピンに突き当てた勢いで跳ねかえり隙間ができとかも起きるでしょう。また、作業者が当たっているものと思い込んでいたが、ちゃんとセットされていなかったなど。

この穴位置ずれ不良が厄介なのは、ランダムに発生するという点です。抜取りで検査しても、その前後の品物がOKである保証はないのです。かといって全数検査することはできません。

中国人作業者は意識が低いと日本人駐在員は言います。それがわかっているのに、この工場のように工程の作業や工法が作業者の意識に頼っているものになっているのを見かけます。

あなたの工場は、作業者の意識に依存した工程になっていませんか?

作業者の意識に頼らない工法にすることが重要です。特に中国工場では。金型を工夫して、正しい位置にしかワークをセットできないような構造にしなくてはなりません。