前回、図面指示とは違う寸法で生産していた中国工場の事例を紹介しました。その工場には、生産を開始するときに生産部及び品管部が正しく加工されているか(図面通りか、公差内に収まっているか)を確認する仕組みがありませんでした。
今回は、環境関連装置を作っている別の中国工場で、図面指示と違うものを作ることが常態化していた事例を紹介します。
前回紹介した工場は同じ製品をたくさん生産するのに対して、環境関連装置は一品ものであり同じものをいくつも生産することはありません。
環境装置の生産現場では、図面よりも自分たちの作り易さを優先するので、図面指示とは違う加工をすることがまかり通っていました。
部品と部品をつなげるために穴をあけるものがあったときも、現場としてやり易い位置に穴をあけ、結果として図面指示とは違っていました。一品ものですから図面と違う位置に穴をあけて部品をつなげても、装置の性能や外観寸法に影響がなければよいという考えです。
日本の顧客に販売したこの装置ですが設置後3年が経った頃、つなげた部品が破損したので、顧客からその部品の製作依頼があり工場で製作して顧客に納品しました。
部品を受け取った顧客で取り付けようとしたところ、穴の位置が違っていて取付けが出来ないという事態が発生しました。なぜこのようなことが起きたのでしょうか?
再製作した部品は、図面通りの位置に穴をあけたのです。当初納入した部品は現場が勝手に穴位置を変えて製作していたため、図面通りに作った部品とは穴位置が違ったので取付けが出来なかったという訳です。
現場で穴位置を変えるときに設計部に確認を取ることをしていればよい訳ですが、現場にそんな意識なく、また、今回のように部品だけを後から再製作して納めるということまで考えが及んでいなかったということです。
このような事例があったので、また別の中国工場の生産部責任者が言っていた次の言葉が強く印象に残りました。
「生産部は図面通りにものを作る、それで不良になっても生産部の責任ではない」と。