FMEAの実施要求・どう対応する!

ある中国企業が取引を開始する予定のドイツ企業の工場監査を受け、20項目ほどの改善指摘を受けました。その中のひとつに「製品の開発段階でFMEAが実施されていないので、今後実施せよ」という要求がありました。
ドイツの顧客からすれば、設計開発段階で起こり得る不具合を見つけ、量産後の不具合発生の芽を事前に摘んでおいてもらいたいと考えるのは当然です。その手段としてFMEAを実施せよということです。
実際のところ、この中国企業では設計開発段階での検証が不十分で量産後に問題が発生し顧客クレームとなることが何度も起きていました。中には初回納品で不具合が発生したために、それ以降注文をくれない顧客もありました。
このような状況はトップも把握しており、設計開発部隊の力量不足を強く感じていました。そのために設計開発から量産に到る設計審査フローの見直しを行うなどしてきましたが、有効な対策とはなっていませんでした。
ドイツ顧客のFMEAを実施せよという要求は、設計開発段階での検証を強化したい中国企業にとってちょうどよい機会と捉えることが出来るのではないでしょうか。この中国企業はドイツ顧客に今後FMEAを実施すると回答しました。
ところが、実はこの中国企業には、開発段階でのFMEAの実施規定が存在していたのです。その規定では新規開発製品時には、FMEAを実施することになっていたのですが、実際は実施されていませんでした。
なぜ規定があるのに実施されていなかったのでしょうか?
トップの指示を受けたスタッフがその理由を調査したところ、次のことがわかりました。
このFMEAの実施規定は、米国顧客からの実施要求で作成したが、他の顧客からの実施要求はなかった。従って、要求のあった米国顧客向けの製品については実施するが、それ以外の顧客向けの製品については実施するつもりはなく、実際に実施していないという状況でした。
過去に米国顧客向け製品で1度だけFMEAを実施していました。実施しているとは言っても、設計担当者がFMEAの書式に記入しただけで、関係者を集めての検証はしていませんでした。
要求があれば実施するが、会社としてそれを有効に機能させて設計開発レベルを高めるという発想はそこにはありません。これも中国企業の実態と言えます。
いろいろな会社を見てきましたがFMEAを実施しても、それが有効に機能している会社は少ないというのがわたしの率直な印象です。ですから、単にFMEAの実施要求をして実施させただけでは不十分とも考えられます。中身のある検証であることが必要です。

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