わたしは中国工場セミナーの中で、どんなにレベルの低い中国工場でもまったく記録がないというところはない、何らかの検査記録は取っていると話すことがあります。
ところが最近まったく検査記録のない中国工場を続けて2つ見ることになりました。天津郊外にある中国ローカル企業で1社は鉄の加工メーカー、もう1社はメッキ業者でした。両社とも顧客は中国企業ですが、顧客の中国企業を通して海外にも出荷しているとのことでした。
こうしたメーカーは品質保証をどのように考えているのでしょうか。今回は鉄加工メーカーについて書いてみたいと思います。
この鉄加工メーカーは中堅クラスで従業員も150人規模の会社です。鉄の曲げ加工やプレスを主に手掛けています。驚いたのは、鉄コイルのスリットを自社でやっていたことです。
この会社、検査をやっていないということではなく検査はやっているが、その記録を残していないのでした。
総経理が「うちは記録するという習慣がありません」と言っていました。
品管の責任者が1人いて、その下に検査員が2人います。この2人の検査員が生産工程を巡回して検査しています。検査員が不良を発見すると品管責任者に報告して、責任者が対応することになっているとのことでした。
生産を開始した最初の製品の検査は必ずやることになっているとのこと。
加工において設備の調整や条件出しが重要ポイントなので、初品の検査は必須です。この初品検査をやっていることは一応評価できます。ただし、すべてについて本当に実施しているかは、記録がないので確認のしようがありません。
この会社、生産中の製品に対しては、検査員が巡回して検査していますが、出荷検査はやっていません。なんと出荷検査は顧客が実施して出荷検査記録表を作成して最終の顧客に提出しています。
この鉄加工メーカーは、自社ですべて品質を保証するという考えはないようです。必要なところは、顧客の検査に頼るというのが実態のようです。
製造業のレベルも上がってきた中国ですが、業種によってはまだまだこのような実態があることを再認識しました。