うまくいかない中国人幹部の日本研修     事例!!

日系企業の中には、中国工場の中国人スタッフを育成するために日本で研修させているところも多くあります。会社費用で日本に行けるというのは、中国人にとって大きな魅力であることは事実です。しかし、ただ日本に連れて来ればいいと言う訳にはいきません。研修の目的や方法を明確にしておくことが必要です。

ある日本の企業では、中国工場の中国人幹部を順番に日本の工場で1~2年研修しています。ところが、研修を受けた中国人幹部に特にこれと言った研修成果はないのが実態でした。

というものこの会社のお偉いさんが中国人幹部に向かって、「日本の会社なんだからお前ら日本語を喋って、日本人の考え方、習慣を理解しないとだめだ」と言っているのです。こんな言われ方をして素直に「はい、わかりました」となる訳がありません。

また、この会社、技術力があれば、よいものが作れると考えているようで、技術面の研修に力は入れているものの、日本のものづくりの考え方や品質管理の知識などは教えていませんでした。

将来の幹部候補を日本に連れてきて研修すること自体は、大変素晴らしいことだと思います。日本に来た人たちのスキルアップや日本を理解してもらうことはもちろんのことですが、まだ日本に来ていない管理職を目指す従業員のモチベーションにもつながります。

上昇志向の強い中国人にとって、がんばれば自分も日本に行く機会があると思うことは、非常に大きなモチベーションになります。しかし、日本に研修に行ったのだから日本語をしゃべり、日本の考え方をすべて理解しろというのは無茶な話ですね。

日本に研修に出す一番の目的は、やはり技術を身に付けて来ること。それに加えて、日本や日本の考え方を少しでも理解して中国に戻った後、会社の考え方に沿って仕事を進めてもらうことです。

中国で日系企業がうまくやっていくためには、日本的品質管理を推進することは必要かつ重要なことは言うまでもありません。ただし、それらを推進するときに中国の習慣や中国人のものの考え方、仕事に対する取り組み方をよく理解したうえで、必要なアレンジを加えて進めることがとても重要です。

さてこの会社、従業員教育に関してもうひとつ問題点がありました。それは作業者教育をしていなかったことです。作業者を教育してそのレベルを上げるという考えを会社が持っていませんでした。これでは幹部だけ日本に研修に出しても、会社全体としてのレベルを上げるのは難しいと言えます。