穴加工の位置ずれ・抜取検査で保証できない!

ある中国企業のプレス工程では、穴あけ加工を多くやっています。作業者がワークを金型にセットし、両手でスイッチを押すとガタンとパンチが下りてきてワークに所定の穴があきます。普通のプレスでの穴あけ加工です。

この工場では、作業者は1時間に1回5個自主検査を行っています。また、品管部の検査員が工程を巡回し2時間に1回10個検査する決まりになっていますが、実際は検査頻度を上げて1時間ごとに検査をしています。

この巡回検査では、たまに穴位置寸法不良が発見されます。面白いもので、作業者の自主検査で同じ不良が発見されることはまずありません。

穴位置寸法不良が出る原因は、セットされたワークの位置がずれていた、正しい位置にセットされていなかったことによります。この製品のプレス加工では、作業者がワークを金型に載せ奥の壁に突き当てることで正しい位置になるようにしています。

つまりワークの位置決めは作業者の作業に頼っているのです。しかし、数量をやっていく中では、正しくセットした、突き当てたつもりでも、そのようになっていないことが起きます。ですから、工程巡回検査で不良品が発見される訳です。

このような構造の金型で加工している製品を1時間に1回の自主検査や2時間に1回の工程巡回検査で品質保証するのは無理です。なぜならこの不良はいつ発生するかわからないからです。

自主検査や巡回検査の結果がOKだったからと言って、その途中に生産したものがOKであるとは言えないのです。検査で品質保証するためには、全数検査をするしかないのです。

このことを中国企業の工場責任者に話したのですが、先方が示した対応策は、作業者に確実にワークを押し付けるよう現場管理者が徹底するというものでした。

~補足~

さて中国企業では、巡回検査員という仕組みを取っている工場が多くあります。日本の工場では作業者の自主検査が行われていれば、このような巡回検査員は置いていません。

なぜ工程巡回検査員を置くのでしょうか?
それは作業者の自主検査の信頼性が低いからです。はっきり言うと、作業者の自主検査が信頼できないからなのです。